--半年以上予約が取れない話題の小料理屋「ななかぐら」の店主でもあり、いつもおもてなし上手で有名な内田さん。そんな内田さんに今日は伺います!今まで内田さんがお贈りしたことのある贈答品はどんなものがありますか?
内田さん:そうですね…贈りたいような素敵なものはたくさんありますが、今日はお醤油についてご紹介しようと思います。島根県にある垣崎醤油店さんの醸魂【金】再仕込み生醤油です。
内田さん:普通お醤油は、大豆を蒸して、そこに麹を入れ、塩水を入れてつくるんです。でも、このお醤油の場合は「再仕込(さしみ)」とあるように、それをもう一回やっている。本来だったら塩水を入れるところを、1度できたお醤油を塩水の代わりに大豆に入れてお醤油をつくっている。つまり、”醤油でさらに醤油をつくる”、というものなんです。コストは2倍かかっている。その手間のおかげもあって、ものすごく濃ゆいお醤油です。
最近はステンレスの樽を使っている醸造所がほとんどだと思いますが、この柿崎醤油店さんは、いまではもうだいぶ珍しい木の樽を使っているのも特長です。その木の樽の中で、醤油を3年間熟成させている。3年も木の樽を占領してしまうと、その間 他のものがつくれないということなので、醤油だけれども、ワインと同じくらい手間をかけて作られているんです。
ーーものすごく、手間暇のかかった貴重なものなのですね….!
内田さん:そうなんです。すごくいいものだし、他で探そうと思ってもなかなかない逸品だと思います。
お刺身や、最後の卵かけご飯としてはなかなか良いし。ドレッシングとしてレモン汁と一緒にかけて、フレッシュな野菜を炒めるというのも美味しいんです。今の時期(4月時点)なら、たけのこにさっとひと塗りして炙る、というのも最高なんです。
なかなか大きくて、賞味期限もあるので、誰にでもお贈りするというよりは、料理人の知り合いなど、これを使い切ることができそうで、かつ、この価値を分かってものすごく喜んでくれそうな人に贈ったりしますね。
ーー内田さんと言えば、やっぱり「食」のイメージが強くあります。他にもお薦めはありますか?
内田さん:はい。もうひとつ、ご案内するとしたら、天城軍鶏(あまぎしゃも)ですね。
内田さん:天城軍鶏(あまぎしゃも)さんは、中伊豆でブロイラーの3倍以上の時間をかけ、平飼い鶏舎で育てられている軍鶏です。こちらは、お肉自体はふっくら柔らかくて美味しいのですが、生産者の堀江さんが「料理人が料理をしたくなるようなバランスの取れた「おいしい肉」を目指している。」と、おっしゃっているだけあって、それだけではなくて、上品を極めた美味しい鶏肉です。そして、雄と雌でも味が違うのもまたいいんです。タイミングが合えば、肉と合わせて卵も一緒に買わせていただくこともあります。わたしは、こういう風にまるごと丸鶏として1体を買える、というのはすごく食育にいいなあ、と思うんです。雄と雌で味が違うことや、産まれたばかりの卵もある、となると食に関する学びのフルコースができる気がします。
贈り物としては、一体をまるまるどなたかにお贈りするというよりも、一度自分で部位ごとにモモやムネ等に捌いてから人に渡しています。塩をして真空パックにするのも良いですし、周りだけさっと湯にくぐらせて真空パックにすると日持ちもします。
ーー美味しそう。是非一度食してみたいです。内田さんは、他にもまだまだたくさんお薦めをお持ちな感じがしますね…..
内田さん:わたしはやっぱり、仕事も含めて、食に携わる機会も多く、贈り物というとやはり基本は「食」が軸になりますね。
日常でいいものがあれば、それを誰かに贈りたいなあ、と思います。そして、素材感や生産者の方たちの考えがしっかり伝わるものも好きです。
SDGsということばもすっかり一般的になりましたが、例えば自分が経営するお店(「ななかぐら」)で出る天ぷら油を捨てるのはなるべく避けたい。そんなときは、石鹸をつくってしまったりします。お店にいらしたお客様にお渡しすると、お店の考え方なども分かってもらえて喜んでいただけたりします。
また、普段お客様にお渡しするおしぼりに天然抽出のヒノキオイルをスプレーして使っているのですが、「この香り、いいですね〜」と気に入ってくださる方がいた場合は、小さなボトルでそのスプレーを差し上げることもあります。冬は檜中心に、時々赤松いれてみたり、夏になるとそこへちょっとミントを加えたりアレンジしたりすることもあります。これも、贈り物のひとつですね…
ストーリーがあって、とてもいいものをこれからも人にお贈りしたいなと思います。
ななかぐら: https://www.nanakagura.tokyo/
醸魂【金】再仕込み生醤油:https://kakizaki-s.com/
天城軍鶏:https://amagi-shamo.jp/
内田 奈々(ななかぐら店主/フードコンサルタント)
国立音楽大学卒業後、1998年よりフランス料理「プロヴァンスドミレイユ」2002年より「神楽坂SHUN分家」料理人・パティシエを経て「神楽坂saryo」(神楽坂・渋谷)をプロデュース。その後料理業界から離れエーエムピーエムジャパン新業態開発部マネージャー、2008年よりペット医療・フード・スポーツビジネスのコンサルタントとして活動。2015年5月、現在のななかぐらの前身となる料理教室を神楽坂に開室。2016年眞鍋政義、竹下佳江と共に日本初の女子プロバレーボールチーム”ヴィクトリーナ姫路”を立ち上げ初代チェアマンに就任。2019年任期満了を迎え取締役を退任、2022年春まで普及活動に携わる。現在、ザ・クレンズ合同会社を立ち上げ、健康と食に特化したフードコンサルティングを行う。順天堂大学遺伝子先端情報学講座 協力研究員、一般社団法人馬肉協会理事。
趣味 肉の解体、歌、バイオリン、トライアスロン、サウナ、DIY、マッサージ